一般社団法人 愛知県木材組合連合会

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平成28年11月

愛知県産材利用の手引き

愛知県産スギ・ヒノキの基準強度及び横架材スパン表

5スパン表の技術解説

51スパン表作成の流れ

511必要最小せいのスパン表作成の流れ

まず、ある対象部材において曲げ応力度、せん断応力度、たわみに関する許容値を設定します。次に、その対象部材にかかる荷重を算出します。そして、対象部材の曲げ応力度、せん断応力度、たわみを計算します。全てにおいて許容値以下となる、梁せいの中で最小値を「必要最小せい」として算出します。他の対象部材においても同様の作業を行い、スパン表を作成します。

512可能最大スパンのスパン表作成の流れ

5.1.1と同じ手順で、対象部材の曲げ応力度、せん断応力度、たわみを計算します。全てにおいて許容値以下となる、スパンの中で最大値を「可能最大スパン」として算出します。他の対象部材においても同様の作業を行い、スパン表を作成します。

52部材の許容応力度と曲げヤング係数

521許容応力度の算出式

建築基準法施行令第89条より、部材の許容応力度の算出式は表 91のようになります。 ss_20151014210237 本スパン表では、梁に大きな圧縮力または引張力が生じる場合は適用外とします。従いまして、許容応力度の計算・判定は曲げとせん断についてのみ行います。

522愛知県産木材の基準強度

曲げ基準強度については愛知県森林・林業技術センターにて実施した、木材強度試験の結果(表 1、表 2)から求めています。せん断基準強度については平成12年建設省告示第1452号に規定される数値とします。スギの基準強度は表 92、ヒノキの基準強度は表 93のようになります。 ss_20151014210456

523適用となる許容応力度と曲げヤング係数

本スパン表を作成する際に適用となる許容応力度と曲げヤング係数は、スギにおいては表 94、ヒノキにおいては表 95のようになります。許容応力度は表 91を用いて算出しています。曲げヤング係数については愛知県森林・林業技術センターにて実施した、木材強度試験の結果(表 1、表 2)から求めています。 ss_20151014210615 ss_20151014210637

53たわみ制限と変形増大係数

平成12年建設省告示第1459号によります。さらに(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表[増補版]」を参考とし、部位別のたわみ制限と変形増大係数を表 96のように設定します。 ss_20151014210823

54荷重条件

541固定荷重

建築基準法施行令第84条に準拠し、固定荷重を設定します。また、令第84条に記載されていない部分については(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表[増補版]」を参考とします。固定荷重は表 97のようになります。 ss_20151014211040 建物仕様は、(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表[増補版]」を参考とし、重い仕様と軽い仕様の2種類とします。重い仕様では屋根は瓦葺き640N/m2、外壁は鉄網モルタル塗り640N/m2とします。一方、軽い仕様では屋根はスレート葺き330N/m2、外壁はサイディング張200N/m2とします。

542積載荷重

建築基準法施行令第85条より、積載荷重は表 98のようになります。本スパン表では室の種類は「住宅の居室、住宅以外の建築物における寝室又は病室」としています。 ss_20151014211155 建設省告示第1459号より、たわみを算定する場合の積載荷重は600[N/m2]とします。

543積雪荷重

建築基準法施行令第86条に準拠します。積雪荷重は以下の式により求められます。 ss_20151014211358 屋根形状係数μbは、雪止めが無い場合、令第86条より以下の式となります。 ss_20151014211502 本スパン表では、雪止め無し、垂直積雪量dは35cmと70cmとしています。一般地域では、積雪の単位重量ρは20N/cm/m2となります。また、屋根の分数勾配は3/10~5/10が適用範囲です。3/10勾配のとき、θは16.70°、μbは0.952となります。5/10勾配のとき、θは26.56°、μbは0.876となります。

544設計用荷重

固定荷重、積載荷重、積雪荷重に基づき、部位別に設計用荷重をまとめると、表 99のようになります。表中の◎印はその部位にかかる荷重として必ず該当するものを表し、○印はその部位にかかる荷重として選択的に該当するものを表しています。選択項目は建物仕様の違い(重い仕様/軽い仕様)、壁荷重の有無などに合わせて該当項目が決定されます。
本スパン表では屋根の分数勾配3/10~5/10が適用となりますが、設計用荷重として荷重が最大となる寸法を採用します。具体的には、常時は屋根勾配5/10、積雪時は屋根勾配3/10を採用します。詳しくは(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表[増補版]」をご覧下さい。これに則った考え方で採用寸法を決めています。 ss_20151014211825 *1:水平投影面積当りの荷重。屋根勾配3/10のとき669N/m2
  屋根勾配5/10のとき716N/m2となります。
*2:水平投影面積当りの荷重。屋根勾配3/10のとき345N/m2
  屋根勾配5/10のとき369N/m2となります。
*3:水平投影面積当りの荷重。屋根勾配3/10のとき52N/m2
  屋根勾配5/10のとき56N/m2となります。
*4:屋根勾配3/10のとき666N/m2 、屋根勾配5/10のとき
  613N/m2となります。
*5:屋根勾配3/10のとき1333N/m2、屋根勾配5/10のとき
  1226N/m2となります。

55部位別の荷重状態と荷重負担範囲

551荷重状態

部位別の荷重状態(集中荷重/分布荷重)を表 100に示します。床梁、小屋梁については「床・天井の配置」、「他梁の受け方」によって荷重状態が異なります。 ss_20151014212258

552荷重負担範囲

表 100の番号に合わせて、荷重負担範囲を以下に示します。(なお、荷重負担範囲の説明に用いる図は見易さを優先しており、図の架構が推奨される訳ではありません。)
a) 床梁
ⅰ) 床梁の両側に床が存在
a)-1 (他の梁を受けない)床梁
表 100中のa)-1に該当する床梁の荷重負担範囲を図 12に示します。荷重状態としては、床の等分布荷重がかかります。このとき設計用荷重は表 101のようになります。 ss_20151014213135 ss_20151014213150
a)-2 両側から他の梁を受ける床大梁
表 100中のa)-2に該当する床梁の荷重負担範囲を図 13に示します。荷重状態としては、床の集中荷重がかかります。このとき設計用荷重は表 101と同じです。 ss_20151014214150
a)-3 片側から他の梁を受ける床大梁
表 100中のa)-3に該当する床梁の荷重負担範囲を図 14に示します。荷重状態としては、床の等分布荷重と集中荷重がかかります。このとき設計用荷重は表 101と同じです。 ss_20151014214258
ⅱ) 床梁の片側のみに床が存在(床梁が外周に配置)
a)-4 (他の梁を受けない)床梁
表 100中のa)-4に該当する床梁の荷重負担範囲を図 15に示します。荷重状態としては、床の等分布荷重と壁の等分布荷重がかかります。このとき床の設計用荷重は表 101と同じになり、壁の設計用荷重は表 102のようになります。 ss_20151014215015 ss_20151014215032
a)-5 片側から他の梁を受ける床大梁
表 100中のa)-5に該当する床梁の荷重負担範囲を図 16に示します。荷重状態としては、床の集中荷重と壁の等分布荷重がかかります。このとき、床の設計用荷重は表 101と同じになり、壁の設計用荷重は表 102と同じになります。 ss_20151014215519
b) 小屋梁
ⅰ) 小屋束を介して屋根荷重を受ける小屋梁/小屋梁の両側に床が存在
b)-1 (他の梁を受けない)小屋梁
表 100中のb)-1に該当する小屋梁の荷重負担範囲を図 17に示します。荷重状態としては、屋根の集中荷重と天井の等分布荷重がかかります。このとき、屋根の設計用荷重は表 103のようになり、天井の設計用荷重は表 104のようになります。 ss_20151014215910 ss_20151014220003
ⅱ) 小屋束を介して屋根荷重を受ける小屋梁/
   小屋梁の片側のみに天井が存在(小屋梁が外周に配置)
b)-2 (他の梁を受けない)小屋梁
表 100中のb)-2に該当する小屋梁の荷重負担範囲を図 18、図 19に示します。荷重状態としては、屋根の集中荷重、天井の等分布荷重、壁の等分布荷重、けらばの等分布荷重がかかります。このとき、屋根の設計用荷重は表 103と同じになり、天井の設計用荷重は表 104と同じになり、壁の設計用荷重は表 102と同じになり、けらばの設計用荷重は表 105のようになります。 ss_20151014220342 ss_20151014220422
ⅲ) 小屋束を受けない小屋梁/
   小屋梁の片側のみに天井が存在(小屋梁が外周に配置)
b)-3 (他の梁を受けない)小屋梁
表 100中のb)-3に該当する小屋梁の荷重負担範囲を図 20、図 21に示します。荷重状態としては、屋根の等分布荷重、天井の等分布荷重、軒庇の等分布荷重がかかります。このとき、屋根の設計用荷重は表 103と同じになり、天井の設計用荷重は表 104と同じになり、軒庇の設計用荷重は表 105と同じになります。 ss_20151014220725

56応力度、たわみの計算および判定方法

561曲げモーメント、せん断力、たわみの計算式

本スパン表では部材を単純梁とし、曲げモーメント、せん断力、たわみを求めるのに以下の計算式を用います。
a) 等分布荷重
図 22のように部材に等分布荷重のみがかかる場合、各計算式は以下のようになります。 ss_20151014221852
b) 集中荷重
図 23ように部材に集中荷重のみがかかる場合、各計算式は以下のようになります。 ss_20151014222004
c) 荷重の組合せ
等分布荷重と集中荷重が存在する場合、それぞれの荷重により生じる曲げモーメント、せん断力、たわみを加算します。
複数の集中荷重が存在する場合、曲げモーメント、せん断力、たわみは以下のように扱います。
ⅰ)集中荷重が2点の場合
<曲げモーメント>
複数の集中荷重が存在する場合、最大曲げモーメントを単純に加算すると曲げモーメントを過大に評価してしまうことになります。従いまして、まず図 24のように、P1荷重点における曲げモーメントの合成M1合成と、P2荷重点における曲げモーメントの合成M2合成を考えます。 ss_20151014222455 M1合成とM2合成を比較し、大きい方を集中荷重P1、P2による最大曲げモーメントとします。

<せん断力>
左右非対称に集中荷重がかかると、右から計算したせん断力と左から計算したせん断力が異なることがあるので、左右比較して最大せん断力を求めます。まず図 25のように集中荷重が2点かかる場合、P1によるL1間のせん断力Q1左、P1によるL2間のせん断力Q1右、P2によるL3間のせん断力Q2左、P2によるL4間のせん断力Q2右を以下のように計算します。 ss_20151014222553 そして、左から計算したせん断力Q1左+Q2左と、Q1右+Q2右を比較し、大きい方を集中荷重P1、P2による最大せん断力とします。

<たわみ>
集中荷重P1による最大たわみδ1と集中荷重δ2による最大たわみを加算します。(δ1+δ2)
ⅱ)集中荷重が3点以上の場合
集中荷重が3点以上の場合、図 26のように集中荷重を等分布荷重と見なして、曲げモーメント、せん断力、たわみを計算します。 ss_20151014222755 図 26のとき、見なし等分布荷重wは以下のようになります。 ss_20151014222831

562部材の応力度とたわみの計算および判定

部材の曲げ応力度、せん断応力度、材端部のせん断応力度、たわみの計算および判定は以下のように行います。なお、曲げ応力度、せん断応力度、材端部のせん断応力度は長期常時と短期積雪時の荷重において判定を行い、たわみは長期常時の荷重において判定を行います。
a) 曲げ応力度
ss_20151015111004 曲げ応力度の判定式は以下になります。 ss_20151015111048
b) せん断応力度
せん断応力度は以下の式より求まります。 ss_20151015111144 せん断応力度の判定式は以下になります。 ss_20151015111215
c) 材端部のせん断応力度
材端部のせん断応力度は以下の式より求まります。 ss_20151015112000 材端部のせん断応力度の判定式は以下になります。 ss_20151015112037
d) たわみ
たわみの判定はたわみ制限[mm]によって行われます。判定式は以下になります。 ss_20151015112121

57断面性能低減

仕口加工の欠き込みによる断面欠損を考慮し、各断面性能(断面積A [mm2]、断面係数Z [mm3]、断面二次モーメントI [mm4])の値を低減します。断面性能低減率は、(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表[増補版]」を参考とし、表 106のように設定します。 ss_20151015112409

58寸法効果係数

EN規格を基に梁せい150mmを基準材とした寸法効果を採用します。曲げモーメントに関する寸法効果係数Kzは一般的に以下の式によって求められます。 ss_20151015112546 EN規格の寸法効果係数Kzは表 107のような数値になります。 ss_20151015112616